お布施とは、葬儀や法要など各種仏事で読経をしてもらうと発生する費用を指します。ただ、このお布施の金額に迷う人は多いのではないでしょうか。知らないからといって、僧侶に尋ねるのもぶしつけな気がします。ここではシーン別に、お布施の相場を解説します。
お布施の金額は「お気持ち」ではあるが、近年では相場を教えてもらえる傾向に
お布施の金額については、昔から直接僧侶に聞くことは失礼とされてきました。これは「お布施は、お世話になったという気持ちを包むもの。気持ちを表す金額は人それぞれであり、相場を設定すること自体に無理がある」という考えからです。また「僧侶に聞いたままを支払うようでは、仏事がまるでアルバイトになってしまう。僧侶の仕事はそのような軽いものではない」という考え方もありるようです。どちらも正しいですが、気持ちといっても少なすぎては失礼にあたるだろうし……と、モヤモヤ悩んでしまいますよね。ただ最近では、僧侶へ率直に尋ねれば具体的なお布施の目安を答えてくれることが多いようです。
理由はいくつか考えられます。檀家として日常的にお寺とつきあう機会が減り「仏事というのは分かりづらいものだ」と言われることが増えたために、仏事に馴染みを深めてもらうためハッキリ示すようになったという住職もいます。また、菩提寺のない遺族には葬儀社が僧侶を紹介してくれるケースが増えてきていますが、その際の僧侶はお布施の金額をしっかり答えてくれることが多いようです。
お布施の金額1:葬儀のお布施は10万円から60万円程度
お布施の金額が最も高くなるのが、戒名を授けて貰い魂を送り出してもらう葬儀です。一般社団法人日本消費者協会が5年ごとに発表している「葬儀についてのアンケート調査」によると、2014年1月発表の調査では「寺院への費用」の全国平均額は44万6,000円。一番のボリュームゾーンは10万円から30万円で次が40万円から60万円、そして100万円以上という答えも少なからずありました。また、中部地方の平均額が60万1,000円、北海道の平均額が30万8,000円と地域によってもずいぶんと差があり、お布施の金額はお寺との付き合いや地域の考え方によって違うと言えるでしょう。
また、最近ではシンプルな葬儀も流行しているため、どこまでお任せするかによっても金額は変わってきます。通夜から葬儀、火葬まで全てを依頼すればお布施は厚めになりますし、通夜も葬儀もしない「直葬」で、火葬炉の前で拝んでもらうだけであればお布施は少なめになるでしょう。なお、葬儀のときにはお布施とは別に御車代や御膳料として5,000円から1万円程度を包むのが一般的です。御膳料は、もちろん僧侶も会食に参加してもらえるようであれば必要ありません。
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お布施の金額2:四九日、一周忌、三回忌のお布施は3万円から10万円程度
四九日から三回忌頃までは、丁寧な供養が必要です。四九日を納骨式と一緒に行う場合は、10万円程度がお布施の目安と考えて良いでしょう。法要のみであれば、3万円から7万円程度が相場とされており、葬儀時と同様に御車代と御膳料を別に包むことを忘れずに。それでも法要のお布施の金額について不安な人は、やはり僧侶に直接聞いてみるのが一番です。また、3万円、5万円、7万円など法要のお布施は奇数が好ましいとされることが多いようで、とくに4万円は「死」に通じることから嫌われます。奇数でも9万円は「苦」に通じると避ける地域もありますから、気をつけましょう。
お布施の金額3:七回忌以降のお布施は1万円から5万円程度
七回忌以降は、三回忌よりも少しお布施の金額が低くなる傾向にあります。1万円から5万円程度を目安に、それに加えて御車代や御膳料を別に包みましょう。
お布施の金額4:お盆、お彼岸など合同供養のお布施はおよそ1万円まで
お寺の檀家となり、お盆やお彼岸に合同供養祭が行われる場合は、お布施を包むのが一般的です。およそ1万円までが相場ですが、余裕があれば同じ檀家の人たちに相談し、足並みをそろえるとより安心です。お寺によっては、きちんと料金表が用意されている場合もあるようです。
お布施の注意点:檀家の場合は護持費も忘れずに
葬儀の際にお布施を払っていても、特定のお寺の檀家になっている場合は定期的に護持費を納める必要があります。護持費(護持会費とも言う)は、寺院を運営するために壇家が支払う費用のことです。毎年、決まった時期に檀家総代がまとめて納めに行くというお寺もあれば、数年に一度で良いので各々が納めに行くことになっているというアバウトなお寺もあることでしょう。お寺の回収などを行った際には、改修費を寄付することも必要となってきます。法事のほかに、いつ誰にどのくらいの金額を納めればよいか、きちんと押さえておきましょう。
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お布施の金額は「お気持ち」であることが前提ですが、どうしても金額に不安な人は直接僧侶に聞いてみるのが一番です。家庭の経済状況を考え、無理のない範囲で包みましょう。