長い人生の中で、誰しも経験する「死別による悲嘆」。その悲しみは心だけでなく、体までもむしばみ、生活に支障をきたす場合があります。もし、自分や周りの人がそうなった時、どのように支え合い、克服すればいいのでしょうか?そこで注目されているのが「グリーフケア」です。グリーフケアとは大切な人との死別による悲嘆のプロセスにおいて、立ち直りまで寄り添い、サポートする方法です。お墓の存在も故人の死を受け入れると意味で、大切なグリーフケアの1つです。いつか来るその日のために、今回はグリーフケアについてご紹介します。
グリーフケアとは
愛する人を死別により失うと、人は心に大きな傷を負います。その傷は強い悲嘆(グリーフ)によるもので、傷を治す(ケアする)ためには、中長期的に段階を踏んで、悲しみから立ち直らせるようにサポートしていく必要があります。これを「グリーフケア」と呼びます。グリーフケアは欧米から導入され、日本では東日本大震災の後、厚生労働省が遺族にグリーフケアを提供したことで注目されました。
参考文献:東日本大震災に関する調査研究|災害時こころの情報支援センター
グリーフ(悲嘆)のプロセス
ドイツの哲学者、アルフォンス・デーケンが提唱した「悲嘆のプロセス」では、悲嘆から立ち直りまでの過程を12段階に分けて説明しました。これはドイツや日本、オーストラリアなどで調査したものから生み出したもので、どんな人も基本的にはこのプロセスを辿ると言われています。このプロセスを踏まえ、立ち直りまでスムーズにサポートしていくことがグリーフケアにあたります。このアルフォンス・デーケンが考案した「悲嘆のプロセス」をここでは大まかに4つに分けて紹介します。
1.現実感覚がなくなる
愛する人が亡くなったことへのショックが大きく、現実感覚が麻痺し、頭が真っ白な状態になります。この症状はショックを和らげようとする防衛本能で、起きた事実さえ否定するようになります。
2.極度のパニック
故人の死を受け入れることで、極度のパニックを引き起こします。そして、死に至った原因を憎み、やり場のない感情をぶつけるようになります。とても辛く苦しい時期で、この期間をいち早く抜け出すことがグリーフケアでは大切です。
3.気力がなくなり、自己嫌悪も
どうすればよいのか分からなくなり、あらゆることに無気力になります。相手に対する過去の行いを悔やみ、自己嫌悪に陥る時期でもあります。
4.立ち向かい生まれ変わる
辛い現実を乗り越えようと努力します。その先に、笑顔を取り戻し、新しい人生を歩み始めます。それは以前の自分ではなく、あらゆる経験を乗り越え、新たなアイデンティティを持った、まさに成熟した存在となりえます。
アルフォンス・デーケンによれば、立ち直る段階で大事なのは「同じ体験を持つ人が他にもいる」ということに気づくこと、とのことなので、グリーフケアを行う人は上記のプロセスをみんなが辿っている、あなただけではない、と伝えることが重要でしょう。
参考文献:アルフォンス・デーケン 特集記事|支えあう会α
グリーフケアの種類
グリーフケアは現実を受け入れ、また新たな人生を歩むきっかけとなります。ここではグリーフケアの種類をいくつかご紹介しましょう。
故人について語り合う
故人について家族や仲間と語り合うことで、自分の抱いている感情に整理がつきます。また、故人を思い浮かべ手紙を書いたり、故人との思い出の写真を見たりするのも良いでしょう。時間はかかりますが、ゆっくり気持ちを整理していくことがグリーフケアとして大切なことです。
葬儀
葬儀を行うことで、故人の死を現実として受け入れることができます。この時に、しっかり涙を流し、悲しむことが大切です。強がる必要はなく、悲しむことこそが人の感情として自然であると理解しましょう。
お墓
法要などを経て、故人の遺骨をお墓に納めることが1つの区切となります。また、お墓を参れば、故人に会えるという心の支えになるでしょう。
専門家に相談する
全国にはグリーフケアを専門にしたカウンセラーやアドバイザーがいます。同じような経験をされた専門家も在籍しており、悲しみに寄り添ってくれます。自分だけで抱え込まず、相談することが大切です。
グリーフケアの注意点
もし、相手にグリーフケアを行う場合、気をつけなければいけないことがあります。こちらを参考にしてください。
無理な励ましはNG
グリーフケアで大切なことは、その人が悲しみと向き合い、自身でけじめをつけることです。無理に励ましたり、勇気づけしても、解決には至りません。まずはお互いの信頼関係の中で、寄り添ってあげることが大切なのです。
アルコールや精神安定剤に依存させない
高ぶった感情を抑えるには、アルコールや精神安定剤が有効のように思うかもしれません。しかし、それは表面的な感情を鈍らせただけで、逆に依存を促してしまいます。感情を抱え込む原因になりますので、依存させないように気をつけましょう。
グリーフケアとは?まとめ
グリーフケアは人を悲嘆から救い、新たな人生を始めるきっかけとなります。愛する人の死で強く悲嘆した時は、感情を押さえ込まず、しっかり悲しむこと。そして、グリーケアに頼ることが大切です。また、お墓選びもグリーフケアのひとつです。故人を思い、感謝を伝える機会として、大切にしていくと良いでしょう。
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