樹木葬を選ぶと批判される?樹木葬と石のお墓の比較
樹木葬とは石のお墓の代わりに樹木を植えてお墓を作るという葬送方式ですが、比較的新しいタイプのお墓ということで賛否両論あるようです。伝統的な埋葬方法と比較すると良いところも、悪いところもあるでしょう。しかし、故人の埋葬については良し悪しではなくて、その人に「合っている、合っていない」の世界かもしれません。ここではそんな樹木葬の賛否について探っていきます。
樹木葬は世界でも注目されている!樹木葬先進国の特長|樹木葬辞典
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日本で樹木葬が始まったのは岩手県一関市で1999年に里山を墓地とし、土に直接遺骨を埋葬を行ったことがきっかけで広まりました。そして実は、それとほぼ時期を同じくして世界中でも樹木葬が広がり始めたといわれているのです。樹木葬の広がりは自然発生的で、一つの国から伝播したわけではないと考えられています。ここでは、世界の樹木葬事情について触れていきます。
欧米ではこの20年ほどで自然環境に配慮した「green funeral」に対する関心が高まっています。主に「緑の埋葬」(green burinal)や「自然葬」(Natural burial)と呼ばれていることが多いようですが、ここではそれらをまとめて「樹木葬」で統一してお話します。世界の樹木葬はそれぞれ国の事情によって様々な展開があります。では、海外での樹木葬の潮流をみていきましょう。
イギリスでは自然に優しい死を考える団体「Natural Death Centre」が1991年に設立されています。この団体が推奨する遺体処理方法には、下記の4つがあります。
こういった埋葬は「緑の埋葬(green burinal)」と呼ばれ、1993年、カーライル森林墓地に最初の樹木葬墓地が開設されました。これをきっかけに、イギリスの樹木葬墓地は公営・民営含め今や国内に270箇所まで増えています。
参考HP:Natural Death Centre
しかし、そのスタイルは多様です。前述のカーライル森林墓地では、まず植樹会で樹がまとめて先に植えられ、その後に埋葬が行われます。墓碑は設置せず、レンガ塀で囲まれた瞑想スペースを設けてそこに埋葬された人々のネームプレートが設置されます。墓参りに訪れた人は、樹木の植えられた埋葬場所に入られないようになっているのです。
火葬率が欧米の中でも70%以上と高いイギリスでは、火葬骨の埋葬墓地の多くは人工的に整備されています。自然葬地事業者協会も結成され、倫理要綱も作られました。イギリスでの樹木葬の定義は「埋葬及び埋骨と、植林あるいは既存樹林や草地の生態学的価値の保全・向上との二つの目的を併せ持つ用地で、石碑の代わりに樹木など自然の素材を利用し、棺やこれに代わる容器や梱包、さらにもし墓碑を使用する場合にその素材を極力分解可能なものに限るもの」とされ、樹木葬の定義も確立され、法整備も進んできているようです。
参考文献:田中 淳夫(著『樹木葬という選択: 緑の埋葬で森になる』築地書館 (2016/2/13)
ドイツ・スイスなど中欧圏の樹木葬の特徴は、墓地を森に作るのではなく、森の中の樹木の根元に埋葬する権利を取得して墓地にするところです。中欧での樹木葬はスイスでユーリ・ザウター氏によって樹木葬を販売する会社「フリートヴァルト」(邦訳では「安らぎの森」)という会社が設立され始まりました。森の木の根元に埋葬用の穴を掘りそこに埋葬されます。埋葬後は希望すれば故人の名を彫った小さなタグを木につけることもできます。樹木葬を行った森には一般人は自由に立ち入って散歩でき、普段から散歩している森が埋葬地になるのです。ドイツでもアクセル・バウダッハ氏によって2001年に樹木葬墓地「ラインハルトの森」が誕生しています。
そんなドイツ・スイスの樹木葬の特徴をまとめると以下になります。
上記のように環境保全への意識が高いことが伺えます。特にドイツでは樹木葬は全土に広がっており、2012年で46の森が樹木葬になっているそうです。参考文献:田中 淳夫(著『樹木葬という選択: 緑の埋葬で森になる』築地書館 (2016/2/13)
アメリカでの樹木葬は1996年にアメリカ西部のベリー・キャンベル氏が墓地を生物多様性保全のための聖域(サンクチュアリ)として活用しようというコンセプトで始まりました。自然保護区に埋葬を行うことで、自然を保全していく仕組みです。実際にサウスカロライナ州のラムゼイ・クリーク自然保護区などが指定されています。
参考HP:Memorial Ecosystems Inc.
また、非営利組織The Green Burial Council(緑の埋葬評議会)が2005年に創立され、合衆国全土に広がりを見せています。
参考HP:The Green Burial Council
韓国では全国の山林に大きな土葬墓を建てる儒教的な葬送文化が李氏朝鮮時代より連綿と受け継がれてきましたが、現在墳墓の面積が国土の1%を占めるほどの深刻な土地問題に直面しています。そこで政府は2008年に埋葬に関する法律を改正し、国を挙げて樹木葬を推奨するようになったのです。核家族化や都市化といった家族形態の変化もこの流れを後押しして、現在では6割の人が樹木葬を希望するという調査結果も得られる状況になったそうです。初めての樹木葬が2004年9月に行われたことを考えると、とても急速に普及が進んでいると言えますね。火葬率も国が奨励して2011年で71.1%まで上がったという報告もあります。韓国の樹木葬はスイス・ドイツ式で墓地の樹林化ではなく、山林に埋葬する葬法を政府が奨励しているようです。
以上、海外での樹木葬先進国の状況を見てきました。
21世紀に入り、伝統的な葬送儀礼や墓制が少なくとも先進国では廃れ、新しい自然環境に優しい葬法にシフトしてきていることが伺えます。国連の推定では19世紀末の1900年におよそ16億人だった世界人口が、産業革命後爆発的に増加し、今や70億の人口を擁する地球となりました。70億人が昔ながらの土葬で石碑のお墓を作っていったら、地球は墓だらけになってしまい、自然環境の破壊は計り知れないものになってしまうでしょう。
そのため、樹木葬へのシフトは、地球規模で見ても必然になってきているとも考えられます。
世界のどの国でも注目され始めている樹木葬、ご自分とその家族のお墓の選択肢に考えることは未来の子孫達に美しい自然を残していくためにも大切なことなのではないでしょうか。
参考文献:田中 淳夫(著『樹木葬という選択: 緑の埋葬で森になる』築地書館 (2016/2/13)
参考文献:小谷みどり「日本で樹木葬墓地は普及するか」 ほか多数
樹木葬とは石のお墓の代わりに樹木を植えてお墓を作るという葬送方式ですが、比較的新しいタイプのお墓ということで賛否両論あるようです。伝統的な埋葬方法と比較すると良いところも、悪いところもあるでしょう。しかし、故人の埋葬については良し悪しではなくて、その人に「合っている、合っていない」の世界かもしれません。ここではそんな樹木葬の賛否について探っていきます。
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